お知らせ・トピックス
刑法第39条
条文
(心神喪失及び心神耗弱)
- 第39条
- 心神喪失者の行為は、罰しない。
- 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
本条は、心神喪失者及び心神耗弱者の責任能力に関する規定である。
行為者に責任能力がない場合には、行為者が違法行為をしたことについて非難することが出来ず、責任が認められないがゆえに犯罪は成立しない。ゆえに本条1項が、「心神喪失者の行為は、罰しない」と定めることによって、責任能力が欠ける責任無能力者についての行為に犯罪が成立しないことを明らかにし、同2項が「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と定めることにより、責任能力があるものの、その能力が著しく低い場合には、それに応じた刑の軽減が必要的にされるべき旨を明らかにする。
行為に対して人は責任を持ちます。罪と裁かれれば罰(報い)を受けます。犯罪者は非難されるべきだからです。罰もまた責任です。報いを果たさせて「もうこりごりだ」と思いこませるのが刑罰の基本。物事の良し悪しの判断がまったく付かない状態で、犯罪に当たる行為に及んだとしても責任(非難)の問いようもないので心神喪失=責任無能力の者は罰しないという考え方で西欧を中心に近代刑法が登場した19世紀頃すでにハッキリと現れています。その頃同じような主張をしたマックノートン・ルールなどが日本の刑法の基盤となっています。「責任なければ刑罰なし」の原則とも呼ばれます。 仮に心神喪失の者が殺人を犯して懲役20年の判決を受け確定したとします。しかし彼・彼女は何でそうしたのかも、そうした事実も認識できません。要するにわけがわからないのです。それを懲役という罰を与えて非難されても、やはり意味が理解できません。よって矯正(欠点を直す)効果も期待できないのです。
刑法39条をめぐる論点・課題
刑法39条には他にも論点があります。1つは撤廃論。これは一部の精神障害者自身も訴えています。刑法40条にかつて「いん唖者ノ行為ハ之ヲ罰セス又ハ其刑ヲ減軽ス」とありました。聴覚や言語機能に障害がある人を対象としています。それが1995の「刑法表記の平易化」の際に削除されました。「いん唖者」から差別的との指摘を受けたからです。ならば精神障害者にも裁判を受ける権利(憲法32条)があるはずだとの主張です。それに対して39条は「いん唖者」といった特定をしておらず、精神障害者や知的障害者だから裁判が受けられないという内容ではないとの反論があります。 「正門からの脱獄」論というのもあります。常習犯など罪を犯しやすい者を何らかの形で強制的に矯正したり治療をする措置が社会の安定には必要だという「保安処分」を巡る是非論です。人権侵害などの反対論で立ち消えとなっていますが、心神喪失者等医療観察法制定の論議で「これは保安処分の一種ではないか」という批判もありました。 鑑定医の質向上も急務です。日本司法精神医学会は2014年から「学会認定精神鑑定医制度」を始めました。来年3月にも初の認定証交付が行われる予定です。
被害者や遺族は苦しみ続ける
「被害者、遺族からすれば、事件の真相もわからず、運が悪かった、ということで済まされてしまう。おかしくないですか」